城郭における大手と搦め手(からめて)は、単なる出入口の違いではなく、城の構造思想・軍事戦略・儀礼性を理解するうえで非常に重要な概念である。

大手とは
 大手とは、城の正面入口。公式な出入口であり、「表玄関」にあたる。最も格式が高く、大名や将軍の使者が出入りする正式ルートである。また、城主の権威を示す場でもある。枡形構造、多重の門(高麗門+櫓門)、横矢掛かり(側面攻撃が可能な石垣配置)など最も厳重な防御が施される。
大手門前には城下町の中心街路が続き、城下町と直結する形で政治・経済の中心軸となっている。

構造例としては以下が挙げられる。
■ 江戸城
  大手門は江戸城の正門。桝形虎口を備え、二重の防御構造が見られる。現在も皇居東御苑入口として機能している。
■ 姫路城

  菱の門を中心に迷路のような大手ルートであり、見せる防御・威圧する導線設計である。

搦め手(からめて)とは
 搦め手とは城の裏口・背面入口のこと。「絡め取る」という語源説があり、敵を包囲する側の出入口とも言われる。軍事的実用性が高く、兵の出撃路、退却路、補給路であり、地形を最大活用してつくられる。山城では尾根続きとなる。平山城では河川・湿地側など目立たないが防御は堅固となる。また、小規模な門でも急坂や細道で防御する。

構造例としては以下が挙げられる。
■ 松本城
  北側が搦め手方面で、堀と自然地形を利用している。

■ 熊本城
  裏側にあたる部分も高石垣で強固であり、攻守両面の出入口となっている。

■ 大手と搦め手の決定要素
  城によって方向は異なる。決定要素は、内容、地形によって変わるが、平地側=大手、山側=搦め手になることが多い。また、城下町に面する側が大手、主要街道に接する側が大手である。
敵の来襲方向を想定して戦略が立てられているが、山城と平城では以下の違いがある。
● 山城の場合
  尾根続きが搦め手になることが多い。谷側が大手になる例もある(例:観音寺城などは尾根方向が重要)
● 平城・平山城
  城下町に面した側が大手で、河川や湿地側が搦め手となる。(例:名古屋城は城下町側が大手である。)城によっては複数の大手・搦め手が存在する場合もある。
まとめ
大手 搦め手
表玄関 裏口
儀礼・政治の顔 軍事的実用路
城下町と接続 補給・退却路
見せる防御 実戦的防御
防御が弱い、ではなく、むしろ最も強固に作られることが多い。
秘密の抜け道ではなく、兵の出撃、退却など正式な軍事動線である。